
かのリヒテルが1965年5月18日にカーネギー・ホールで行ったコンサートでの録音でロ短調ソナタを聴きました。彼のライブ録音はさまざまなものが残されていますが、どれも怒濤の迫力。そして怒濤故に音楽として崩壊の危機につねに瀕しています。この一枚はHMVの紹介によると、ご自身でもうまくいったと気にいっていた録音のようで、たしかに迫力が漲りながらもとても大きな破綻はなく、最後まで弾ききっています。とはいえ、盛り上がるところでは、なぜそこまでアクセレレートしなければいけないのか、といったスピードで突進し、案の定大変なことになり、それを派手やかなに切り抜けるあたりが面白い... のですね。....と言っていると曲芸評みたいですが。でも思うに、リヒテルには強烈な表現衝動があったのでしょう。それをどう表現するかはある意味ではわれわれの常識などとはいっさい関係ない出来事なのでしょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿