2012年10月28日日曜日

ミンコフスキー、シューベルト交響曲全集

 21日に神戸大で開催された仏文学会で、ベニシューのロマン主義論に関するワークショップのパネリストをせよと仰せがあったので、ベニシューとランシエールのマラルメ論について少しだけ話をしてきました。発信するというよりは、いろいろと話を聞いてこちらが勉強するという感じです。これに触発されて19世紀前半についても少し勉強できればと思います。週があけてからは、また日々の業務の再開です。次の山は、1月の京大人文研・第一次大戦班の報告で、立派な論集への参加も命じられたので(「精神の危機」をめぐって書けとのこと)、かなり緊張しています。ながらくツンドク状態であった、Pascal DethurensのDe l'Europe en littérature (1918-1939)(『文学におけるヨーロッパ』)を読み出しましたが、文体に難渋しています。とはいえ、全体のパノラマとしては勉強になるので、興味深く読み進めています。──楽しみにしていたマルク・ミンコフスキの新譜、シューベルト交響曲全集を聞きました。じつはシューベルトのシンフォニーにはあまり親しみがありません。3番、未完成、グレート、くらい。今回、8曲をそれなりの注意をもって聞きました。ベートーヴェンの影響大ですが、いずれも洒落ていてます。グレートなど、ワーグナーやブラームスをそれぞれ思わせる箇所がありますね(誤解かもしれませんが)。ミンコフスキーは、ヘンデルのオペラはもちろんのこと、前回のハイドン、ロンドン・セットも新鮮な驚きをもって聞きましたが、シューベルトは、きわめて優れた演奏であるにせよ、それでもややインパクトに欠けたのは、こちらの感受性のせいなのかいなか。彼は今後も19世紀以降の曲に挑戦していくのか、だとすれば、なにか大きな脱皮があり、われわれを驚かせてくれるのか……、こんなややストレートではない感想を抱きました。

2012年10月17日水曜日

デームス『ディアベッリ変奏曲』。

 17日水曜日。先週来風邪を引いていて、まだ微熱があります。今日はめずらしく6時頃にぱっちりと目が覚めました。朝ご飯を食べ、早めに研究室に行って仕事でも、と思ったのもつかの間、もうすこしだけ寝ようとベッドに戻ったのがまちがいで、不覚にもそのまま眠ってしまいました。結局、2限の院ゼミからの始動。昼に臨時の教授会。そのまま帰ってきて、昼食後は、学会ワークショップ(21日、於 神戸大学)の原稿の続きです。東大駒場でのウィリアム・マルクスの講演は熱っぽいので諦めることに。ボーとした頭を絞りつつ夜までかかって16枚ほどの原稿がなんとかできあがりました。なにやらランシエールでベニシューを批判しているような雰囲気になってしまいましたが、ランシエールをわきに置くことでベニシューの議論がより明確になる、という感じで話せればいいと思います。

イェルク・デームスの弾く『ディアベッリ変奏曲』を聞きました。1976年のレコードが今年CD化されたものということのようです。1枚目では、ツェルニーやリストやフンメルやカルクブレンナーやらの変奏が32曲ほど選ばれて演奏されています。2枚目がベートーヴェン。Gröber、Broadwood、Grafといったフォルテピアノによる演奏です。先般リリースされたアンドレアス・シュタイアーも同じようなコンセプトでしたが、デームスの方が選択された変奏の数は多いので、興味深いものになっています。じつは「ウィーン三羽烏」のうちではもっぱらバドゥラ=スコダを聞き、デームスは聞いてこなかったのですが(グルダは苦手です)、ウィーンのピアニストらしい才気煥発の好演といった赴きで気に入りました。それに『ディアベッリ変奏曲』はベートーヴェン以外の作曲家による変奏にも十分記憶に値する面白いものがたくさんあるように思います。それを再認識させてくれた点でも貴重な一枚でした。