2014年7月11日金曜日

「ノアは、子らと、妻と、子らの妻たちと箱船に乗った。」

 ちょっと前ですが、妻に連れて行かれるままに『ノア 約束の舟』を見てきました。結果は... 微妙な映画でした。ノア(ラッセル・クロウ)は個人的に好きな俳優でしたので、比較的楽しく眺めていることができました。ノアの三人のむすこたちセム、ハム、ヤフェトのうち、妻がいるのはセムだけで、しかも彼女は襲われたときに受けた傷で子供が産めない体になっています。ノアは自分にも妻を、というハムの願いを頑なに拒み、彼が連れ帰ってきた娘を混乱のなかで見捨てて死なせてしまいます。ノアは人類の絶滅が神の意志だと確信しており、自分たちの家族も子孫を増やすことなく死に絶えていく運命にあるのだと考えていたのです。父を恨むハム。ハムはノアの宿敵トバル・カインにそそのかされ、父を殺そうと思うも、結局カインの方を殺します。ノアは奇跡的に生まれてきたセムの双子の娘を殺そうとしますが果たせず、こうして人類の当面の存続が保証されることになりました……。父子の対立、結婚問題、少子化?... と現代の諸問題が古代に投射された映画で、また、岩の番人が暴れ回ったり、箱船に鳥や蛇や動物たちが大挙してやってくるシーンなどではCGが大活躍ですが、映像としての喜びはほとんど感じられず、物語内容のたんなる記号という印象を強く持ちました。
 で、妻をもてぬことを父を恨んだハム君ですが、じつは『創世記』(VII-7)には「ノアは、子らと、妻と、子らの妻たちと箱船に乗った。」と書いてあります。あららら.... ハム君にもちゃんと妻がいて、仲良く箱船に乗れたわけです。だとすると、その後の壮絶なドラマも不要だったわけで... 結局あの映画はなんだったのだろう?という後味の悪い印象が残りました。
 驚くべきは、この聖書協会訳の「ノアは、子らと、妻と、子らの妻たちと箱船に乗った。」という訳文。ここには反復による独特のリズムがあります。いまの普通の翻訳者はこんな風には訳せないでしょう。いわゆるこなれた訳ではないけれど、力強く文体性を感じさせる姿をしています。

 でも、どうでもいいことですが、ジェニファー・コネリー(ノアの妻)はいしだあゆみに似ているなあ...

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