2013年6月16日日曜日

新『大岡越前』──時代劇の終焉

 BSでやっている『大岡越前』(三方一両損)の録画をざっと見た。朝日では加藤剛版の完全リメイクだというので、かなり期待していたのだけど、うーん、これはカツラをつけたホームドラマだ... 時代劇はもちろん時代の世相を反映する現代劇でもあるのだが、身分の違いや長幼の序が劇の基本的な前提としてきちんと感じられないと、お茶の間か教室でわいわいやっているのと違わなくなってしまう。国仲涼子(忠相妻)などは 松原智恵(忠相母)にむかって「母上ったら」などと言っていたが、あんなセリフを書く脚本家のセンスが知れない。状況によっては「おかあさまったら」はありえても、「母上」と「ったら」は日本語として結びつかないはずなのだが......。全体にセリフはゆるみまくっていてキレがなかった。さらに津川雅彦(忠相父)も迷走している。今回の話では、頑固一徹で騒動を起こす役回り。とはいえ、この経験豊かな老優も、町奉行の隠居した父親という「身分」はどこかに忘れてしまったようで、現代の頑固じじいがカツラをつけている以上の印象を与えることができなかった。時代劇って、『水戸校門』でも、また先日の『鬼平犯科帳』ですら思ったことだが、もう完全に終焉したジャンルなんだなあ。夫婦や親子の対話がたんなるホームドラマになり、侍と町人とが完全にフラットな関係に見えてしまうなら、時代劇の基本的な前提は消えてしまっている。それはもちろん社会が平等になってよいことではあるけれど、作品表現としてはデタラメであろう。

 ひとつだけ、東山紀之は加藤剛には遠く及ばないけれど、わりあいよい。

2013年6月11日火曜日

ホロヴィッツ・ライヴ・アット・カーネギー・ホール(41枚組)

 資本主義というのは人にストレスを与えて、それで衝動買いをさせるシステムだと、私は考えている。

 で、そういうわけで、先日、「ホロヴィッツ・ライヴ・アット・カーネギー・ホール」(41枚組) を予約購入することになった。曲目を見ているとほとんど持っているのではないかという感じもするが、いちおうHMVの説明によると「CD41枚のうち、約18枚分が世界初発売となっており、これまでホロヴィッツの演奏では聴くことのできなかった、ブラームスの間奏曲変ホ長調作品119-4に、ドビュッシーの『子供の領分』第5曲「小さな羊飼い」の2曲が含まれるのも注目されるところです。」とのことで、これまでは海賊版ですごい音質だったジョージ・セルとのチャイ・コンも正規版でおそらくそれなりの音になるようだし、値段も予約すると22670円が13850円とかなり割引されるので、えいやあ、と注文してまったわけであった... 感想はまた追って。8月到着とか。