2010年3月29日月曜日

最後の歌舞伎座。

 27日土曜日。昼にちょっと仏作文の添削をやってから家を出て、2時半から友人ご夫妻と歌舞伎座で芝居を見る。


4月の興業が最後で、建て替えとあいなるので、もう本当に最後である。


 三部制の第二部から。まず『菅原』の『筆法伝授』と『白浪五人男』の浜松屋から稲瀬川勢揃いまで。筆法伝授は初めて見た。梅玉の武部源蔵はともかく、仁左衛門の菅丞相はさすがであろう。白浪では吉右衛門の南郷力丸と幸四郎の日本駄右衛門という珍しい兄弟競演が実現した。弁天小僧は菊五郎ではなく、浜松屋若旦那の菊之助でもよかったかも。第三部は『道明寺』と天王寺屋親子の『石橋』。道明寺は、山城の録音を何度も聞いたが、竜田の前が殺されるところはなく、例の木造の丞相が偽迎えに乗り込むところからなので、今回の上演で殺される場面のイメージがつかめて良かった。仁左衛門の丞相はやはりよい。こういう神がかった役は大変であろう。玉三郎の覚寿は、14世守田勘弥所縁ということだが、こちらも良かった。石橋は、衰えたながらも富十郎の仕草は絶品であり、こちらの気持ちが改まるような舞台。大ちゃんは、可能性の片鱗を見せ始めたか。

 4月が最終公演だが、もう切符も売り切れだというし、こちらも忙しいので、これが最後の歌舞伎座だろう。新築はなにやら上にビルがつくらしいが、普通に考えて、オペラ座の上やスカラ座の上にビルがあったら、あちらの人々はみんな怒るだろう。東京っ子がこういうことを聞いて怒らないのはどうにも不思議でならない。松竹はまあその程度の会社だが、長い目で見れば文化的にはずいぶん損をするであろうと思う。こういうあたりに近代日本人の貧困さが露呈している。