2014年6月19日木曜日

ランシエール『マラルメ セイレーンの政治学』が刊行されました。

 ジャック・ランシエール『マラルメ──セイレーンの政治学』(坂巻康司・森本淳生訳、水声社)が刊行されました。マラルメ理解の基軸をブランショのように60年代の精神的危機の時代──『エロディアード』や『イジチュール』のマラルメ──におくのではなく、むしろ70年代以降のより軽やかなマラルメに移し、第三共和政の社会を激震させたアナーキズムやドレフュス事件を注意深く見つめるとともに、バレエ、見世物、パントマイム、モロドラマにも目を向け、金髪、装飾品、ドレスの襞、芸人のスパンコール、幕の房飾り、花火といったはかなくもとるにたりないものを文学のフィクション性の象徴と考えたマラルメの活動を、詩作品の理解からその美学的・哲学的位置づけを経て、社会における詩人のあり方についての省察にいたるまで、網羅的に、しかも透徹した筆致によって、描き出した小著ながらも名著だと思います。

 訳者としての思いはつぎの一文に集約されています。
 ──「歩道の地面すれすれの高さから祈りの放物線を思い描くこと。無にも等しいこの行為がまったくの無ではないことの意味を、マラルメはわれわれに教えてくれている。」(「訳者あとがき」、p. 223)

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